そう簡単に、歌って踊らない! 自然な流れとズラしが秀逸な「 LA LA LAND ラ・ラ・ランド」
女は大作映画のオーディションを受けるが女優としては目が出ず、
撮影所の前にあるカフェで女給として働く。
男は自称ジャズ・ピアニストではあるが、
実際はレストランで客のリクエストでムード音楽を鳴らす名もないピアノ弾き。
男はそんな店もクビになる。
そんな売れない女優としがないミュージシャンは、
何度か顔をあわせるが、似たような境遇だからといって、
出会ってすぐ簡単に、恋に落ちることはない。
現実は映画のようにはいかないのだ。
この作品がいくら「映画」、しかも「ミュージカル映画」だといっても、
スクリーンの中で出会う男女が、そう簡単に恋に落ち、恋人同士になるわけはない。
そんなリアルが、この映画「 LA LA LANDラ・ラ・ランド」の良さの一つでもある。
しかしオープニングは、観客を作品世界にぐっと引き込む秀逸な幕開け。
1950年代、栄華を誇った時代のアメリカ西海岸。
流れるカメラワークで、カラフルな原色の車が渋滞するフリーウェイ。
突如、歌い出すアメリカの若者たち。なんだかこれが不自然ではない。
セリフのように様々な立場にあるアメリカ人を登場し、歌い・踊る。
まるで「当時のアメリカ人なら、こんな風に歌うように喋っていたんじゃないの?」
と感じさせられるくらい、なんだか流れるようなミュージカル映画の始まりである。
それでも本編中は、そう簡単に「歌って踊らない」!
そんな、自然な流れとズラしが秀逸な「 LA LA LAND ラ・ラ・ランド」。
監督は2014年、「セッション」でサンダンス映画祭グランプリ&観客賞、
米国アカデミー作品賞候補にもなった、デイミアン・チャゼル。その最新作。
主演は、ライアン・ゴズリング(「ドライブ」’11)と
「セッション」とはまったくテイストが違うが、そのチャゼルの新作とくれば、
僕のごとき「映画見」は是非とも見ておきたいところだ。
では、「絶対シネマ感覚」で言えばどうか?
絶対に映画館で見ておくべきか、そう慌てて見るほどではないか?
・・・といえば、とにかく映画館で見て、絶対に損はない。
「映画の演出・仕掛け・見せ方の現在」を押さえておく意味でも、
今、映画館で見ておくべき作品である。そして・・・
女優になりたい! ミュージシャンになりたかった!
映画を観に行く私たちの心の中に、少しはそんな夢想があるのだろうか。
おそらく誰もが、画面の中で「言い合い、歌って踊る」そんな男と女に、
少しだけ、あるいはそれ以上に、驚くほど感情移入することだろう。
行き着く先に何があるのか? 私たちが夢想する憧れの世界のゴールとは・・・
それは本編を見て、それぞれに感じていただきたい。
(↑ サントラ盤のビジュアル)2017年1月19日 GAGA試写室 Preview
・・・ちなみに、私の現時点(2/6)での米アカデミー作品賞予想はこれではない。
2017年2月24日公開・全国ロードショー(絶シネ度★★★)